~フローズン・タイム~ キャッシュバックで時間よ止まれ

 

2006年のイギリス映画 フローズン・タイム (CASHBACK) を観ました。

“CASHBACK” est un film qui filme l’intérieur d’une personne de manière un peu étrange et extraordinaire.

“CASHBACK” is a movie that shoots the inside of a person a little strangely and extraordinarily.

 

 

エロい映画なの?

パッケージの写真とか邦題からするとどう見てもエロティックな映画にしか見えないのですが(この記事のアクセスが深夜に集中しているのもそのせいでしょう)、なんとなくお洒落感のある写真なので非常に気になる映画でした。

きっとファッショナブルなだけで中身は無い、つまらない映画なのだろうとあまり期待もしてなかったのですが、ところがどっこい、最初から最後まで飽きずに観られる映画でした。

舞台は基本・スーパーマーケットです。イギリスの。

ちょっとマイナーな雰囲気かつスーパー店員の恋愛って点で最近観た2002年の映画「グッド・ガール」と被って見えたんですけど…なんか似た顔のキャストもいましたし。

 

夜勤で働く美大生

主人公のベンは美大生で、絵を描くことが好きなのですが、とりわけ女性の裸体に小さい頃から惹かれていました。

恋人に振られた彼は不眠症になったのを機に睡眠時間をスーパーの夜勤に当てて「キャッシュバック」することにしました。

原題の「キャッシュバック」はここから来ているのですね。

邦題の「フローズン・タイム」はぶっちゃけ「時間よ、止まれ!」の意味でそのまんまですが、なんていうか原題のパッケージを見るとまた全く違った映画に見えるんですよね。胸を隠してない無修正のバージョンとそうでないのがあるとかなんとか言われてるようですが。

個人的には「フローズン・タイム」の方が、映画全体のひんやりした雰囲気にはまっていて合っていると感じます。

 

スーパーの同僚バリーがマイクロスクーターで店内を走り回るシーンではラヴェルのボレロが流れてます。

 

 

幼少期に女性の裸体にえもいわれぬ「美」を感じてしまったベンの周りの時間がどういうわけか止まってしまう、スーパーで。

失恋のショックのせいか、慣れない夜勤のせいか、精神病でも発症しかけていたのでしょうか、時間が止まった時にもう無意識に女性の服を脱がして一心不乱にデッサンをしてしまう。

そこの所のインスティンクトな演技・演出と、女性の体に対する制御できないほどのフェティシズムが、静寂した画面と非現実的な展開の中から生々しいほどのリアリティーをもって迫ってきました。

ベンは女体が好きなように見えますが、私からすると体よりも顔の方に執着してるように見えますね。

美人な客の顔やレジ係のシャロンの顔を緻密なタッチで描いています。

サンドイッチを食べた後のシャロンの頬についた食べかすを取ってあげるシーンなども顔に対するこだわりが垣間見えるようです。

別にベンが自ら時間よ止まれと念じているわけじゃないんですけどね、なんか自然に止まっちゃうんですよ。

でも時間を止めてもっとシャロンと居たいと思っても思い通りに止まらず、「この瞬間を味わいたい、この時間を生きたい」「でもムリだ、減速しかできない」なんて心で呟くシーンも出てきます。

好きな人や片想いの相手と一緒に居る時に、「このまま時間が止まればいいのに!」って思うアレですが、残念ながら自分ではコントロール出来ないんですね、時間を。

サッカーの試合の途中でも時が止まっちゃうんですが、そんな中でもベンは独特の台詞を心の中で呟き続けます。

そんなところはフランス映画を彷彿とさせますね。

あー、フランス版の吹き替え、しっくりきてますね~‼️

 

 

ただ、フランス(的なイメージ)と比較すると全体に何もかもが角張っていてソフトな丸みが足りないなという印象を受けますが…笑

 

 

でも試合の最中、店長が審判にアメリカの犯罪映画「ヒート」をパロったふざけた発言をして「パチーノ、デニーロ」なんて台詞が飛び交ったり。

そして試合後ジュースを飲んだベンが振り返ると、静止した世界の中、グレーのパーカーを着た男がただ一人動いて走り去って行きます。

それがこの映画の謎になっているようです。

様々な解釈が出来ますね。

 

 

突然突入する非日常とおっぱいと乳首とお尻と色々

スーパーで働く学生とか、表向きの設定は庶民的で現実的な映画なんですけど、そういった不思議な現象が何食わぬ顔してナチュラルに入り込みます。

イギリス映画「普通じゃない」のダンスシーンで感じた突然入り込む非日常性に似たものを感じました。

脳内と現実が同化する瞬間みたいな。

 

ベンは南米へ行く夢を持ってスペイン語を学んでいるシャロンに対する憧れを彼女の顔をデッサンしながら内的に確かめています。

描きながら心の中で呟く台詞も「世界を映し出す瞳」とか、ひとつひとつが詩的な独自性を持っています。

そこで淡々と流れているのは ガイ・ファーリー (Guy Farley) の Pittsburgh

 

 

この映画のサントラはイギリスのミュージシャン、ガイ・ファーリーが主に担当しています。

監督である ショーン・エリス (Sean Ellis) は VOGUE やHarper’s Bazaar で活躍していた写真家だということでなんとなく納得するものがありました。

人をマネキンのように撮るところとか女性や人体の捉え方がファッションフォトグラファーっぽいですもんね。

まるで雑誌のファッション写真みたいな構図です。

スーパーで脱がせるシーンも、(エロシーンといえるのか?)スタイルのいい若い女性が中心で老人とか太ったおばさんとかいないし…ていうかこの映画をエロいと言っている人はよほどおっぱいが好きなのかな?とも思うんですが、ベンを女体美に目覚めさせたスウェーデン娘含め裸になる女性はみんな幅の細いくびれたモデル体型なんですが胸だけはバ~ン!!って感じで前に飛び出してるような、日本人にはいない迫力のある西洋彫刻のようなボディです。(な~んて、私もベンと同類の女体フェチになっちゃいましたね)

ちなみによくある「時間よ止まれ!」という日本のアレは被写体の女性が下手くそに静止してるふりだけのそもそも時間止まってないっていう稚拙なシリーズなのでこの映画の精巧で非の打ち所のない静止映像とは(金のかけ方も含め)比較にもなりません。

 



 

ラストも、ちょっと複雑な三角関係みたいな展開でしたが、ベンとシャロンが共にふわふわと消え行くような曖昧なエンディングで、はっきりと描かないのですが意味深な終わり方です。

そんなエンディングで流れ出すのはデンマークのロックバンド、グランドアベニュー (Grand Avenue) のShe です。

 

 

こういうラストの描き方、好みだなぁ~

その後ノルウェーのエレクトデュオ、ロイクソップ (Röyksopp) の What Else Is There? が流れます。

 

 

けっこう個性的な音楽のチョイスですね。

主人公の心理を、外側の世界をちょっとエキセントリックな演出でいじくることにより描き出しているところに独特な手法を感じました。

内面世界をユニークに表現した非日常的な映画が好みの人にはおすすめです。

エロチック目的で興味を持った方もぜひストーリーを追って楽しんで観てみてください。

 

 

 

 

 



フローズン・タイム   CASHBACK

 

2006年 イギリス 102分

 

監督 ショーン・エリス

 

キャスト

 

ショーン・ビガースタッフ(ベン)、エミリア・フォックス(シャロン)、ショーン・エヴァンス(ショーン)、ミシェル・ライアン(スージー)、スチュアート・グッドウィン(店長)、マイケル・ディクソン(バリー)、マイケル・ランボーン(マット)、マーク・ピッカリング(ブライアン)、エミリア・フェントン(ターニャ)、イリーナ・バガチ (静止した美女)

 

内容(あらすじ)

 

美大生のベンは、恋人スージーと自分から別れたが、やり直したいと申し出てしまう。しかしスージーには新たな恋人ができたと聞き、ショックで眠れなくなってしまう。

ベンは不眠によって浮いた8時間をスーパーマーケットの夜勤に当てるようになるが・・・

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です