観ようかどうか迷っていた パリに見出されたピアニスト をサービスデー料金で観ました。
J’ai vu “Au bout des doigts”.
Et j’ai été impressionné par le héros qui ne vit que pour jouer du piano.
I saw “In Your Hands”.
And I was impressed by the hero who lives only to play the piano.
仏名優一族のサラブレッド、ジュール・ベンシェトリ
貧しい生まれでありながらピアノこそが人生である主人公があれこれ迷い、経営危機に陥ろうとしている音楽院の教師と協力しつつも成功を試みる音楽映画です。
原題は“Au bout des doigts”(指先に)ですが、邦題も珍しく素晴らしいほうだと思います(笑)
まず、オープニングの駅構内での演奏シーンからして目を惹きます。
新進気鋭の俳優 ジュール・ベンシェトリ(Jules BENCHETRIT) はとにかくその家系が凄い!とやたら話題になっています。
まず祖父が“男と女”で有名なフランスを代表する俳優ジャン=ルイ・トランティニャン(Jean-Louis Trintignant)であり、父は“アスファルト”などが代表作の映画監督兼俳優のサミュエル・ベンシェトリ(Samuel Benchetrit)で、母は“ポネット”などに出演した故マリー・トランティニャン(Marie Trintignant)だということで、映画界のサラブレッドであることが注目されています。
マリー・トランティニャンの死因に関しては、とあるバンドと関係がありまして、こっちの記事に書いてあります。
サミュエル・ベンシェトリ監督は最近あのヴァネッサ・パラディ(Vanessa Paradis)と結婚していたのですね。
ということはジュール・ベンシェトリはヴァネッサの義理の息子ということになるのでしょう。
ピアノが好きで好きで生きている主人公
ジュール演じる主人公マチューは移民の多い低所得層団地に母・弟妹の4人で暮らしていましたが、幼い頃の近所の老紳士との出会いをきっかけにピアノに関心を持ち始め、仲間と色々悪い事をしつつ警官の目を盗んでは駅の構内に設置してある誰でも使えるピアノを弾いていました。
ありそうな話ですね、実際。
ほんのちょっとしたきっかけでそれまで無縁だった何かに関心を持つことってありますよね。
駅構内でマチューのピアノ演奏を見たピエールは、マチューを追いかけますが逃げられてしまいます。
その駅構内での演奏がこれまた初っ端から凄い腕前なんですけど、ピエール以外の通行人はあまりマチューに注目しないんです。
その後警察に捕まったマチューにピエールは手を差し伸べ、実刑を逃れる公益奉仕として自らがディレクターを務めている名門のコンセルヴァトワール(パリ国立高等音楽院)で掃除の業務をすることを条件に、マチューを釈放させます。
そしてもうひとつの条件として、音楽院でピアノレッスンを受け一流ピアニストを目指すことを言い渡します。
フランスは最高学府が大学ではなく、音楽院とか美術学校とかの名称なんですよね。
最初は乗り気でなかったマチューもピエールの強い説得を受け、厳しい女性教師エリザベスの下でレッスンをし、難関の国際ピアノコンクールへの出場を目指します。
エリザベス役のクリスティン・スコット・トーマス(Kristin Scott Thomas)、フランス映画でよく見る女優さんだな~と思ったら私の大好きな映画「危険なプロット」(Dans la maison)の教師の妻役でしたね。
エリザベスのレッスンでは、学生が「才能ないなら辞めなさい」などバンバンダメ出しを喰らい、泣きながら部屋を出てくる様子などが見られます。
クラシックのピアニストとか演奏家って天賦の才能も必要ですけど生半可なメンタルじゃ無理なんでしょうね。
成功している人達は元々もしくは鍛え上げられた結果、打たれ強い鋼の神経が備わっているのだと推察しますし、この映画を観ていても非常に厳しい世界なのがわかります。
あと、マチューの恋人役として、フランスで有名な黒人の女優カリジャ・トゥーレ(Karidja Toure)が出ています。
美人というよりファニーな顔ですが、すごく足が長くてスタイルがいい女優さんです。
私はクラシック音楽に詳しくないのであまりわかりませんでしたが、マチューが駅で弾いた曲、
ヨハン・セバスチャン・バッハ(Johann Sebastian Bach) による 「プレリュードとフーガハ短調BWV 847」(prélude & fugue no. 2 en do mineur, bwv 847 : prélude)には初っ端から物凄い迫力を感じました。
当たり前ですがジュール・ベンシェトリの演奏は吹き替えだと思うのですが誰が弾いているのかな?と調べたら、どうやらハリー・アラッチ(Harry Allouche)という作曲家兼ピアニストが担当しているようです。
とはいえジュール・ベンシェトリは1日に2~3時間のピアノレッスン(特訓?)をしたそうです。
そりゃそうですよね。とにかく指の動きがプロそのものですよ。
ピアノこそが人生の全て
他にもリスト( Franz Liszt ) の 「ハンガリー狂詩曲」(Rhapsodies hongroises)、コンクールの課題曲としてラフマニノフ(Sergei Rachmaninoff) の 「ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調」(Piano Concerto No.2 in C minor, Op.18) が登場します。
この映画は設定や結末含めてベタな王道ストーリーだという意見もありますが それにしてはあまりにもリアルなので実話なのかなと思ったのですがそうではないようです。
たしかにストーリーに出来レース的なベタ感は感じました。
しかし、私はこの映画の主人公マチューの「ピアノこそが人生の全て」という姿勢に強く惹かれました。
ビル・エヴァンスの名言「美と真実だけを追求し、他は忘れろ」という言葉もそうですが、他のことがどうあれ、ピアノを弾いている時だけが全てであるというその感覚が本当に芸術家らしく理想的な状態だと思うのです。
そんな風に生きられればどのような状況でも常に心は満足できるでしょうね。
今年は特にクラシック、ロックなどジャンルを問わず音楽の映画が多いし、昔から数多くの音楽映画がありますが、このようにただ演奏のためだけに生きている究極の芸術家を題材にした映画を、フィクション・実話問わずさらに観たいと思いました。🎹🍎🎼


パリに見出されたピアニスト AU BOUT DES DOIGTS
2018年 フランス・ベルギー 105分
監督 ルドヴィク・バーナード
キャスト
ランベール・ウィルソン(ピエール・ゲイドナー)、クリスティン・スコット・トーマス(エリザベス)、ジュール・ベンシェトリ(マチュー・マリンスキー)
あらすじ(内容)
パリ郊外の団地で暮らすマチューはピアノが大好きで、秘かに練習し続けている。ある日パリ北駅のピアノを弾いていると、偶然通りかかったパリ国立高等音楽院のディレクター、ピエールに声を掛けられる。その後警察に捕まったマチューは実刑を免除してもらうため、公益奉仕をしながら音楽院でピアノレッスンを受けることになる。