2008年の指揮者ランキングトップ20に女性は一人もいなかったそうです。
そして2017年の指揮者ランキングトップ50にも女性は一人もいないそうです。
“De dirigen” raconte l’histoire d’une chef d’orchestre qui a réalisé son désir sans perdre ses désavantages.
“The Conductor” is a story of a female conductor who fulfilled her desire without losing her disadvantages.
貧しい移民の女性が指揮者を目指す
レディ・マエストロ (DE DIRIGENT) は、1930年代という時代に、女性でありながら全身全霊で指揮者の道を歩んだオランダの指揮者アントニア・ブリコ(Antonia Louisa Brico) の奮闘が描かれています。
オランダ移民のブリコは生まれてすぐ新聞広告に養子縁組の募集をかけられ、ニューヨークの貧民街で裕福でない夫婦の下、ウィリーという名前で育てられます。
後に、本当の母親アネットはすでに死んでおり、父親は音楽家だったということを母親の妹である修道女を訪ねて知ります。
ブリコは観に行くオーケストラの演奏する全てのパートを覚えており、楽団員に意見したり、最前列に椅子を持ち込んで無理にでも鑑賞したりするほどのクラシックマニアで、小さい頃から指揮者になりたくてなりたくて仕方がないのですが、女の身で指揮者になりたいというと誰からも爆笑されます。
それはそうと、「指揮者」って一体どういう存在なんでしょうねえ。
指揮者はいらないのではないかという意見まであります。
ほんのちょっとだけ吹奏楽とか合唱をやったことがある私としては・・うーん指揮はあまり見ていなかったかな。ほんとは見なきゃいけないんだけど。
でも、オーケストラの演奏が始まる時、指揮者がハイッと指示を出すじゃないですか。
あれがないと演奏始められないって感じしますよね。
やっぱり大人数の楽団には必要でしょうね、指揮者は。
ブリコは、外見も中身も真面目なのですが今ひとつ堅苦しい雰囲気があり、当時容姿の方が重視されていたタイピストの仕事などには受からず、ドラァグクィーンやゲイの多い個性的なナイトクラブで働きながら念願叶って音楽学校に通うのですが指導者によるセクハラ行為に遭ってしまいます。
そこで訴訟を起こすのですが、辞めればすべてなかったことにするといわれ学校を辞めてしまいます。
ウィリーからアントニア・ブリコに名前を変え、恋仲になった株主セレブであるフランクを捨ててベルリン交響楽団の指揮者となった彼女は女性だけの楽団を率いるのですが、そこに男性を入れた途端に世間の関心が薄れ、だんだんフェイドアウトしていってしまったということです。
女性だけという部分にのみ、イロモノ的に好奇心を持たれていただけだったのかもしれません。
しかし、ブリコは自分自身の情熱で運命を切り開き、女性指揮者として初の成功をおさめた存在として間違いなく音楽史に残る人物なのだと思います。
登場する曲で印象に残ったのはなんといってもガーシュイン(George Gershwin) のラプソディ・イン・ブルー(Rhapsody in Blue)でした。
良い感じで演奏されます。
他にも、マーラー(Gustav Mahler) の 「交響曲第4番」(Symphony No. 4 in G major)、ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky) の 「火の鳥」(The Firebird) など、オーケストラ好きならつい反応してしまうだろうなと思う曲目でした。
自分を信じる力
たまたま同じ時期に上映されたのだと思いますが、先日観た『パリに見出されたピアニスト』(Au bout des doigts)も全く同じような境遇から音楽家を目指し成功したストーリーです。
『レディ・マエストロ』は実話、『パリに見出されたピアニスト』はフィクションという違いはありますが、ひょっとしたら後者のストーリー設定はブリコの人生が参考とされているのではないかと思ってしまいました。
オランダ映画なので言語は英語とオランダ語が混じった感じです。フランス語もちょっと出たかな。
ラストに向かうほど深くなっていく作品で、セクハラ&パワハラ&差別&嘲笑etc.と次から次へと女性指揮者ならではの困難が降りかかり、見ているだけでも波瀾万丈で圧倒されてしまいそうになりますが、何があっても絶対にめげず自分を信じて指揮者の道を諦めないブリコの姿勢はあっぱれでした。
パリに見出されたピアニストは教師側の圧倒的なプッシュによるものでしたが、この映画のブリコの場合は本人のあそこまでの熱意がなければ名を残すこともなく、現在活躍する数少ない女性指揮者に与えた影響もなかったでしょう。
そういう意味で情熱というのは音楽には不可欠なものであると感じました。
境遇に屈せず自らの理想を貫いた音楽のサクセスストーリーが今年2本も現れたのはラッキーです。
今後はまたまた違った設定の奇想天外な音楽ストーリーを沢山観てみたいなぁと思いました。🙌🏆💐
レディ・マエストロ DE DIRIGENT/THE CONDUCTOR
2018年 オランダ 139分
監督 マリア・ペーテルス
キャスト
クリスタン・デ・ブラーン(アントニア・ブリコ/ウィリー)、ベンジャミン・ウェインライト(フランク)、スコット・ターナー・スコフィールド(ロビン)
あらすじ(内容)
1920年代のニューヨーク。オランダ移民のアントニアは指揮者になることを熱烈に夢見ているが、ある事件を起こし音楽学校を退学になってしまう。その後ドイツに渡ったアントニアの前には様々な困難が立ちはだかる。