~女神の継承~ 犬がかわいそう?タイの祈祷師が闘う悪霊・女神の正体は?

 

 

気になっていた映画 女神の継承 を観ました。

ミッドサマーを観た時と同じヒューマントラストシネマ渋谷のシアター2。

スクリーンの横幅があんまりなくて大きくはないんですけど売店の裏側にあり奥まった雰囲気でなんとなくホラーがはまる部屋だと勝手に思ってます。

ずばりミッドサマーみたいなカルト宗教団体の話を想像していましたが、予想とはかなり違った内容でした。

観たいと思ったきっかけは6月に「サンフランシスコ連続殺人鬼」を観に行ったシネマート新宿のロビーに女性が布で顔を隠され紐で縛られている不思議なポスターが貼ってあるのを見て興味を持ったからです。

その時に予告編も観ましたが相当怖そうなシーンが流れていましたし、そのアングラっぷりにますます興味を持ちましたが、東南アジアの在方が舞台だし話題にもならないくらいの目立たないマイナーな映画かと思ったらけっこう話題になってきましたね。

 

 

監督は韓国出身ですが舞台はタイの山村です。

時代設定がわからないのですが多分現代でしょうね。

映画の前情報をほとんど読まずに観たので、いきなりNHKの取材みたいなドキュメンタリー映像が始まり「潜入しカメラを回した」みたいなナレーションが入るのでそのままドキュメンタリーかと思って観ていました。

でも主演の若い女性がどう見ても女優さんとしか思えないルックスと話し方なので途中でやはりフィクションだと気づきました。

内容はいわゆる集団ヒステリー的な騒動をモチーフにしたホラーですが、私がこの映画で気になったのはストーリーや題材というよりもむしろそのテレビの取材ドキュメンタリー風の個性的な撮り方で、ほんとかウソかわからないような引き込み方にユニークなものを感じました。

そういう撮り方のことを「モキュメンタリー」というらしいですが、その中でも「撮影者が行方不明になって第三者が手に入れたテープに〇〇が映っていた!」みたいなのは「ファウンド・フッテージ」というジャンルに入るみたいですね。

日本でも98年の呪いのビデオブームのあとから頻繁に見受けられる手法になりました。

巷に出回ってる怖い話とかでも「トイレの外で死んでいた人を防犯カメラが写していたが突然ハサミを持った小さい老婆がトイレから出てきて遺体を切り刻んでいったのが写っていた」とか「お葬式の様子を撮ったビデオでお棺の中の遺体から魂のようなものが抜け出して遺影の中に入っていった」などの映像ネタが流行りました。

アメリカ映画の「ブレアウィッチ・プロジェクト」や「パラノーマル・アクティビティ」がそのジャンルのホラー映画として有名です。

でも「ブレアウィッチ・プロジェクト」はやっぱりフィクションだなって観ていてわかります。(最後の20分くらいから急に佳境に入ってからはとくに作り物感が出てると感じます。)

まぁ引き寄せられた雰囲気は出てますね。

「パラノーマル・アクティビティ」はさらに作り物感・演技してる感がありますけど、全く怖くない平凡なセットを雰囲気で怖く見せるのに成功していますし、家の中が舞台になってる分ブレアウィッチより身近な怖さがあると思います。(でもアメリカの広い家ならではのストーリーですね。)

YouTubeなどのない時代の作品ですからより鮮烈さが際立っていたのでしょう。


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ワーナーホームビデオ

上記の2作品は役名が本名ですけど、女神の継承はそんなこともしてないのに終始すべてが本物のドキュメンタリーのようにリアルに感じられる映画でした。

アジアの作品だから身近に感じるのかな?

言葉は悪いけど舞台になる山村が未開な雰囲気だからってのもありますかね?

制作費の情報は出てないけど・・・ブレアウィッチでも7~800万くらいだったみたいなのでもっと低いのかな?

狂った状況の恐怖心でうわー!みたいに絶叫しガタガタ震えながら目を見開いて顔面パニックになるところなどにリングの真田広之とか日本のホラー映画を彷彿とさせました。

だいたいオカルト的に人を怖がらせようとして生身の人間が思いつけるものとしては連れ去られて行方不明になるか殺されるか死ぬか憑りつかれて奇行に走るか怖い女の人が出てくるか物が動いたり変な影が映るかとかだいたい決まってます。(この世の全事象においてほんとに怖いのはホラーオカルトじゃないもののほうですからそっちは置いといて)

それらの程度や塩梅をどの辺まで攻めるかでホラー作品の品位やカラーが決まってきますよね。

ベタなやり方だと馬鹿にされるし、『怖い』を楽しもうとするのって実は大変です。

もちろん効果音は欠かせません。ホラーは実は聴覚が8割くらいを占めているといってもいいと個人的に思います。

 

 

この作品を観ていると西洋の作品ではないのになぜか「オリエンタリズム」という言葉が思い浮かんできたんですけど、それとは別にまだまだ発展途上のアジアの片田舎で女性や若い女子がターゲットになり祈祷師や女神として受け継がれていくとかこういった風景がまだ実在するならばやはりまだ女性蔑視や家父長制的な文化が根強いなという印象を受けました。

女性が強いというよりもなんかすごく女性にバイアスがかかってるという印象ですもんね。

身内の男性がみんな不幸な死に方をするという設定も裏を返すとなんか、、、実兄とミンが関係持っていたという事実もありましたし。

そして犬にも負担がかかっていますね。

まだ犬食がある地域があるみたいですのでそれを再現したシーンもあります。

ほんの一瞬なので私にはちょっとはっきり観えなかったのですが「撮影で動物に危害は加えていません」という説明書きがエンディングで出るくらい衝撃的なシーンです。

昔こっくりさんだか何だかに憑りつかれる漫画を読んだ記憶があるのですが、欲望が暴走して小さい子からお菓子を奪って食べたりよそで飼われている鶏を頭から食べようとしたりとこの映画そっくりの描写がされていたのを思い出します。

すごく爽やかで屈託のない清純な笑顔の女の子の顔つきがみるみるうちに般若みたいになってしまいますし。

悪霊って人間の邪欲の象徴みたいなものですね。

祈祷師が吸い取った人間の邪欲や怨念がなんらかのバグを起こしミンに憑依したのかもしれません。

ホラーの系統としては73年の「エクソシスト」にかなり近いと言われていますが、私の期待したミッドサマーとは共通点はまったくないといっていいでしょう。

が、唯一似てると思った点がエンディングでタイの呪詛的なおそらく民謡がお経のように流れるところです。

ミッドサマーでも北欧の民謡みたいなのが流れましたよね。

冒頭シーンや儀式シーンなどに出てくる仏像バヤンが映った自然の景色や特徴的なテキスタイル等は、よくイメージされる派手でカラフルなタイテイストではなく田舎のタイの独特な渋みのある素朴なオリエンタルムードを存分に感じさせ、内容の過激さは抜きにしてアジア好きなら旅行に行ったようでそれだけでも楽しめるかもしれません。


 

 

女神の継承   랑종 The Medium

 

2021年 タイ・韓国 131分

 

監督 バンジョン・ピサンタナクーン

 

キャスト

 

ナリルヤ・グルモンコルペチ(ミン)、サワニー・ウトーンマ(ニム)、シラニ・ヤンキッティカン

 

内容(あらすじ)

 

タイ東北部の山村で代々受け継がれてきた祈祷師の一族であるミンは普段は職業安定所に勤めているが、ある日突然原因不明の病に見舞われ凶暴な人格に豹変し奇行を繰り返すようになる。ミンの母ノイは祈祷師である妹のニムに助けを求めるが・・・

 

 

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