ウォン・カーワイ ( Wáng Jiāwèi / 王家衛 ) の 恋する惑星、観たのは3回目くらいになりますけど、観る度に印象が変わっていて、ようやくストーリーの全容が見えたといったところでしょうか。
恋する惑星は、10代の時によくマスコミで話題になっていた頃とてもお洒落っぽい映画に見えて憧れていたのですが、まともに観たのがわりと最近です。
これも時間を軸に四人の男女がすれ違う群像劇です。
主題歌を初めて聴いたのは、偶然手に入れた「re-review」というオムニバスCDです。

主に90年代に流行った映画、といってもややアンダーカルチャーな映画のサントラが入っているものです。

【かなり古いCDですがアマゾンで買えますね】
恋する惑星のテーマ「夢中人」
オースティンパワーズなど知っている曲もありましたが知らない曲も多かったため興味津々だったのですが、実はこれの3曲目に フェイ・ウォン ( FAYE WONG / 王菲 ) の 夢中人 が入っていたのです。が、
ふわふわーっと浮遊感のある曲だなという印象しかなく、それが憧れのオシャレ映画恋する惑星のテーマだとは気づかずひたすら他の曲に気を取られていました。
それでこないだアマプラで久々に観た時、再生したらランニング姿のトニー・レオンが出てきてしばらく観ていたら突然夢中人が流れ出しクレジットロールが始まったので、えっいきなり初めからこれが流れるんだっけか?と思ったらエンドロールでした。
どういうわけか終わりの方から再生されちゃっていたようです…
金城武 (Jīnchéng Wŭ) が広東語と日本語と北京語と英語をシャッフルして喋るのが印象的です。
謎のドラッグ売人女 ブリジット・リン (林 青霞 / Brigitte Lin ) の金髪カツラが不自然ながらもキッチュな味を醸し出しています。
邦題の「恋する惑星」は沢山の人が住む建物を“惑星”と表現したことで評価されているみたいですが、原題の「重慶森林」はあの香港のディープな名所である巨大なビル「重慶大厦」(チョンキンマンション)の名前をもじったものであり、とてもカッコイイと思います。村上春樹「ノルウェイの森」からとってるみたいですけど。
「恋する」なんつったって劇中で恋してるのは実質フェイ・ウォンだけですしね。
邦題ってやっぱり「恋」を入れたがりますねーっ、て改めて思います。
冒頭から流れる緊迫したような悲しそうな音楽はオリジナルサントラの曲です。
前半ブリジット・ウォンが出てくるシーンでは、デニス・ブラウン(Dennis Brown)のシングス・イン・ライフ(Things In Life)が何回かかかります。
市場でごちゃごちゃやってるシーンではなんかインドのシンガーソングライター、スリンダー・カウル(Surinder Kaur)の曲が。
PIPLAN DI CHHAN という曲みたいですが、民族っぽさを強調ってとこでしょうかね。
夢のカリフォルニア
金城武とフェイ・ウォンが偶然ぶつかるシーンで一時静止し「その時 2人の距離は0.1ミリ」と字幕が出ます。
この「直接関係のない人物同士の偶然のすれ違い」シーンが、まさしく群像劇の醍醐味だと思いますね。
めちゃくちゃ近くに住んでるのに一生関わることはないみたいな感じ。
そして「6時間後 彼女は別の男に恋をした」と出た直後に流れるのはこの映画のサブテーマといってもいい、フェイ・ウォン演ずるフェイお気に入りの 夢のカリフォルニア(California Dreamin’)ですね。
これ以降この映画の中で通算7回(!)流れます。
1965年に ママス&パパス (The Mamas&Papas) が発表し全米で4位となった曲ですね。
店の中でもラジカセでこの曲をかけて躍り狂っています。よほど好きなのでしょう。アメリカに憧れてる感じがします。
しかしまぁラジカセとかコンポとか懐かしい物が出てきますね。
香港の屋台みたいな店でこの郷愁のあるアメリカンな曲をかけてるとなぜかエキゾチックな印象の曲に聴こえます。
トニー・レオンが機内で口説き落としたスチュワーデスと抱き合うシーンでは ダイナ・ワシントン (Dinah Washington) の 縁は異なもの (What a Difference a Day Made) が流れます。
トニー・レオンにフェイ・ウォンが店で誘われるシーンでも流れるので曲のタイトルとマッチしてます。
そしてラスト、エンドロールで流れるのが フェイ・ウォン の 夢中人 というわけです。
映画を観てからあらためて聴くとほんと、フェイが店主に夢遊病と言われた通り、良い意味で夢の中を彷徨っているような女性のイメージです。
てっきり中国語のオリジナルなのかと思ったら原曲が洋楽でした。
原曲は、アイルランドのロックバンド、クランベリーズ (The Cranberries) のドリームス (Dreams) です。
サントラオリジナル曲もけっこうあるのですが、映画全体としては上に出た「シングス・イン・ライフ」と「夢のカリフォルニア」と「縁は異なもの」と「夢中人」で構成されてる印象の映画です。
この映画、曲選びとシーンや設定、タイトルまできちんとリンクしてますね。
【夢中人を含めた90年代へタイムトリップできるサントラ】
金城武が奔走する天使の涙
天使の涙 は原題だと「堕落天使」なのですが、英題は「Fallen Angels」でずばり「堕天使」という意味なのですね。
そこいくと邦題はマイルドな印象です。でもなんだ、「涙」ってw
「天使」も一体誰のことなのかな・・・?
シャーリー・クァン ( 關淑怡/Shirley Kwan ) の Wang Ji Ta ( 忘記他 )
テレサ・テンの有名曲のカバーです。
金城武がジュークボックスで聴くのは フランキー・チェン / ロエル・A・ガルシア ( Frankie Chan, Roel A. Garcia ) の Young Lover Blues #1
ちょこちょこと流れていたのは チー・チン ( Chyi Chin ) の Si Mu De Ren
金城武が自分をビデオに撮りながら歌っているのもこの曲です。
あとはサントラの曲がちょこちょこと入り
エンディングはイギリスのアカペラグループ、フライング・ピケッツ (The Flying Pickets ) の オンリー・ユー ( Only You ) で締めくくります。
天使の涙はもともと恋する惑星の一部として製作された映画らしいですが、恋する惑星に比べるとストーリー性が低い感じはしますがセクシーさとバイオレンスの度合いが高い感じがします。
殺し屋が出てきますしね。
恋する惑星もそうなんですが香港の高層ビルや高速道路、欧米にはないちょっとゴチャゴチャしたきらびやかなアジアの魅力が堪能でき、日本に来て住んだりするフランス人などの外国人はこういう東洋的な風景を観て日本にも憧れたのかなぁ…なんて思いました。
大人っぽいスタイリッシュなアジア映画を求めるなら天使の涙でしょう。
【官能的でスタイリッシュなアジアンモードに浸れるサントラ】
スタイリッシュなアジアン映画
花様年華(かようねんか) は1962年を舞台にしているので、女性の服装がチャイナドレスだったりして見るからに古い時代の雰囲気の映画です。
1991年の鈴木清順監督映画「夢二」のテーマ曲 ( yumeji’s theme ) が使われています。
映画の中で強調して流れているのはほとんどこの曲ですね。
アケヨス・オホス・ヴェルデス ( Aquellos Ojos Verdes ) は
ナット・キング・コール ( Nat King Cole ) のラテンのスタンダードナンバーです。
同じくナット・キング・コール ( Nat King Cole ) の キサス・キサス・キサス ( Quizas Quizas Quizas )
マギー・チャンがつけたステレオから流れるのは チョウ・シュアン ( 周璇 )の Age of Bloom
英語だと花期という意味になるようですが中国語の原題だと Hua Yang De Nian なので、これがずばり花様年華という意味なのでしょう。
私がとくに気に入ったのはラストのアンコール・ワットのシーンです。
ひんやりした石の質感が伝わってくるような描写に惹かれました。
しっとりとした石の匂いまで感じられるようなリアルなシーンです。
この映画の中では中国的な音楽とラテン音楽が親和し、よりオリエンタルで情熱的なムードを醸し出しています。
赤を中心とした原色の色彩基調に中国の俳優さんたちが妖艶に映える画面で、一度そのスチールを観たら忘れられないような比類なき鮮やかさです。
とくにヒロイン、マギー・チャンの着ている60年代らしいモダンなチャイナドレスはとても品があるデザインで、よく日本人がイメージする安っぽくてケバケバしいチャイナドレスとは全く違います。
しかも20枚くらいは着替えてるような。
インテリアもシンプルでこざっぱりとした中にモダンでゴージャスな装飾が施されており、ウォン・カーウァイの作品の中でもダントツのセンスです。
ドレス、カーテンや壁紙などのテキスタイルの柄がとにかく凝っていて美しいんです。絵画を見ているよう。
こんなの観たらほんと欧米人は東洋に思わず憧れちゃうかもしれないですね~。
ヨーロッパにはないようなしっとりしたオリエンタルテイストが満載ですので。
そして香港版の予告編がすごくムード溢れる仕上がりだったので思わず見入っちゃいましたが、YouTubeにはもうないかも?
日本版予告編は夢二のテーマやナット・キング・コールを流しているだけなのですが、オリジナルは ブライアン・フェリー ( Bryan Ferry ) の曲 I’m In The Mood For Love がずっと流れているだけの長い予告編なのですが非常にムードがあります。
【大人のムードたっぷりのサントラ】
というわけで、今頃になってようやくウォン・カーワイの映画の魅力を音楽含めて総括、評価できるようになってきました。
恋する惑星 重慶森林/Chungking Express
1994年 香港 100分
監督 ウォン・カーウァイ
キャスト
トニー・レオン(警官663号)、フェイ・オン(フェイ)、ブリジット・リン(謎の金髪女)、金城武(モウ)、チャウ・カーリン(スチュワーデス)
内容(あらすじ)
刑事のモウは失恋した日から一か月後の自分の誕生日までパイナップルの缶詰を買い続けているが、偶然入ったバーで金髪の謎の女と出会う。ファストフード店で働くフェイは、店の常連の刑事663号宛の手紙と合鍵を店主から託されるが、彼に想いを寄せるフェイは、その鍵を使って部屋に忍び込む。
天使の涙 堕落天使/FALLEN ANGELS
1995年 香港 96分
監督 ウォン・カーウァイ
キャスト
レオン・ライ(殺し屋)、ミシェール・リー(エージェント)、金城武(モウ)、チャーリー・ヤン(失恋娘)、カレン・モク(金髪の女)
内容(あらすじ)
顔も知らないエージェントから惚れられ、彼女の前から姿を消す殺し屋と彼に恋した金髪の女、期限切れのパイン缶を食べ過ぎて口の利けなくなった男と付き合う失恋女、五人の物語が交錯して進行する。
花様年華 花様年華/ In the Mood for Love
2000年 香港 98分
監督 ウォン・カーウァイ
キャスト
トニー・レオン(チャウ)、マギー・チャン(チャン夫人)、レベッカ・パン(スエン夫人)、ライ・チン(ホウ社長)、スー・ピンラン(ピン)
内容(あらすじ)
1962年の香港。ジャーナリストのチャウと商社の秘書チャンは同じ日に同じアパートに引っ越してくる。チャウの妻とチャンの夫は多忙であまり家におらず、それぞれの部屋で一人で過ごすことが多い二人はやがて互いのパートナーが不倫関係にあることに気づき、徐々に親密になっていく。





