至妙な演出とカメラワークで魅せる皮肉なスリラー
トラボルタ 演じる主人公ジャックが、B級(とその当時は扱われた)映画、つまりチケット売上を第一の目的として暴力やセックスを強調させたりわざとタブーなことを扱い低俗に描く「エクスプロイテーション映画」に使う音響効果音を収録しようと夜の川のほとりで録音を行っていましたが、偶然にそこで起きた車の事故を録音してしまったところからすべてが始まります。
冒頭が、アムステルダムの飾り窓みたいなちょっといかがわしい風景からなんですが明らかにヒッチコックのサイコをパロってます。
で、それが本編なのかと思いきやいきなりトラボルタのいるスタジオのシーンに切り替わるから驚きました。
この演出、好みです。
ヒッチコックを意識しているというこの作品、ヒッチコックのフォロワーでありサスペンス・サイコスリラーの巨匠、ブライアン・デ・パルマ (Brian De Palma) によるカルト映画ですが、私サイコスリラー自体、映画じゃなくてもかなり好きなジャンルなので。
原題の「BLOW OUT」は私も頭をよぎったのですが、66年のミケランジェロ・アントニオーニの「欲望」(Blow Up)から取っているらしいですね。映画全体に漂う空虚ながらねっとりした雰囲気も似ています。
週刊誌に載っている事故の写真を一つ一つ切り取って撮影しコマ送りにして自分の録った音声を合わせていく作業シーン、何がなんでも真相を解明してやると職業特権を利用してまるで警察並みに細かい作業に全力投球するところにこちらもワクワクと興奮しました。
ジャックの勤めている映画会社の廊下などにブギーマンなどのカルトっぽい映画のポスターが飾ってありますが、叫び声のオーディションをするシーンで壁に飾ってある「lure of the triangle」 という映画のポスターが目を惹きます。1977年のポルノ映画のようですけど。
シーンに合わせて背景のポスターなどを変えてるところにセンスを感じます。
オーディションを受けに来た女性たちの服装・メイクもオシャレです。
最後の15分くらいからはナンセンスな前半とは違った雰囲気とテンポになり、結末へ向けていかにもなザ・スリラー映画っぽさで急展開していきます。
サリーを助けようと必死で走るトラボルタのスローモーションが切なく、そこで打ち上げられる花火の美しさもこの映画の有名な見所です。
バークを刺したものの間に合わず虚しくサリーを抱き上げる時のテーマ曲も物悲しく盛り立てていますね。
この映画のサントラってそんなに有名だったのかは知りませんでしたが、ピノ・ドナッジオ (Pino Donaggio) によるテーマ曲はどこかで聴いたことのあるメロディーだと思いました。
映画全体を通して赤っぽい照明演出も印象的です。
ラストがブラックな感じがして賛否両論ありますがこのシュールな終わらせ方、トラボルタの最後の悲痛な表情が秀逸で、非現実的なところも含め、私に言わせるとこういう「ヒェッ⁈」とするようなオチこそが映画を観る醍醐味であり、これこそが映画だ!とも思います。
ミッドナイトクロス BLOW OUT
1981年 アメリカ 113分
監督 ブライアン・デ・パルマ
キャスト
ジョン・トラボルタ(ジャック・テリー)、ナンシー・アレン(サリー)、ジョン・リスゴー(バーク)、デニス・フランツ(マニー・カープ)
内容(あらすじ)
フィラデルフィアでいわゆるB級映画の音響効果の仕事をしているジャックは、低予算でエクスプロイテーション映画を撮るために郊外の川のほとりに来ていたが偶然そこで起きた車の事故の一部始終を録音してしまう。負傷者サリーが運ばれた病院に行くとジャックは事故に関しての緘口令を言い渡され、物々しい空気に包まれていたが、その後録音したテープに銃声が入っていることに気づく。事故で死亡した同乗者は大統領選の有力候補者であり、すべてを闇に葬ろうとする隠ぺい工作の手がジャックに忍び寄る。